意欲が出なく、仕事に行けない

 

仕事や会社が嫌になり、無気力になって職場に行きたくない時は、誰でも1度ぐらいは経験するでしょう。身近な例では、ベットから起き上がっても、力が抜けたような気だるさに襲われ、なかなか職場に足が向きません。職場についても、「しなければいけない」と分かっているのに仕事に、集中できず、帰宅しても、不安や心配が心から離れません。悶々として、翌日起きても、同じようなことが繰り返される。このような釈然としない、無気力感に陥っている人が少なくありません。

 

 

無気力状態の様々なケース

 

心療内科医として無気力について考えると、当然のことですが原因や背景はとても個人差があって、ひとくくりに説明できません。しかし無気力状態を、簡単に、特徴的なケースに区別して紹介します。

  • 生活の全てに興味を失い、何事も無気力になっているケース。
  • 仕事に関しては無気力だが、したいことは進んでするケース。
  • 無気力状態をなんとか解消したいと焦り、自らを責めるケース。
  • 無気力状態が続いているのに、意外とのんびり構え、深刻に考えていないようなケース。
  • 無気力感が短期間生じる。たとえば月のうちに2・3日疲労感に襲われ、無気力になる。その間休息すると改善するケース。
  • 出勤前に偏頭痛、下痢、腹痛、微熱などの身体症状が出て、無気力になって、しばしば会社を休むケース。
  • うつ病 うつ状態を思わせるような、重度の無気力状態をきたすケース。
  • 睡眠障害のため、朝起きられず遅刻したり欠勤し、それがもとで無気力になるケース。
  • 職場の人間関係のストレスが強く、不安になり職場に足が向かないケース。

 

職場になじめない、仕事についていけない、職場が平和でない仕事のモチベーションが上がらない

 

仕事に対して無気力になる原因について、

今から具体的に4つの例を挙げて説明します。

  • 職場の人間関係
  • 職場の雰囲気
  • 職場内の派閥の対立
  • 仕事のモチベーション

 

これらに問題があって、無気力になったケースです。

 


《職場の人に、違和感を感じ、親しみを感じられない》

職員は知り合いや、親戚関係の人が多く、よく言えば家族的であるが、自分はよそ者扱いされ、窮屈で仲間意識が持てず、愚痴1つ言えなかった。その上、同僚と言えば、年齢が離れ、話も合わない、気も合わない。このような理由から、なかなか職場に馴染めなかった。懇親会に行っても楽しむこともできなかったし、打ち解けることもなかった。はじめの頃は、仕事だと思って割り切ってたが、どうしても自分には馴染めなかった。そうしているうちに、無気力になって、職場に行くのが嫌になった。

 

《職場の雰囲気になじめない》

職場の上下関係がきつく、まるでロボットみたいに対応しなければいけかった。上司の人格にも問題があって自己中心的で、部下の意見に全く耳を貸そうとしなかった。「これをしてくれ」「これは良くない」と命令するだけで、指導 助言もない。みんなピリピリして、苛立ちを覚えているようだった。どうしても職場の雰囲気についていけない、もう嫌になってやる気を失って無気力になった。

 

《職場が平和でない、対立がある》

職場に入って、気づいたことに、いろんな派閥がある。それも、仕事を優先するようなものではなく、誰々と誰々が組んだり、あるいは派遣社員の派閥、正社員間の派閥、その他無数の派閥がある。また女子職員に対する、見えざる差別があった。会社は、中堅どころの規模で業務成績も良好で、仕事の内容もそう難しくなかったが、派閥の対立、縄張り意識、集団の圧力、そんなことが、会社の中でマンネリ化していた。頑張ったつもりだったが、疲れ果てて頭痛 、肩こり、腰痛、微熱など体の不調も生じた。仕事をしているより、派閥の抗争に巻き込まれ、何をしてるかわからなくなった。割り切って、仕事をしてる人もいるが、自分はそれができず、徐々に、無気力になって会社を休むようになった。

 

《仕事のモチベーションが上がらない》

職場は、自分のキャリア、学んできたことが、全く生かされなかった。それどころか、自分のそういった能力は、完全に無視され、まるで機械のように、作業をこなすだけの日々が続いた。就職した時は、自分の希望する部署で、生き生きと働いていたが、理由らしい理由もなく、突然その部所へ配属を言い渡された。働く意義、 意味 も、わからず「いつになったら慣れてくるのか」と深刻に悩んでるうちに、仕事のモチベーションが上がらず、無気力になった。

 

〈注意〉プライバシーを配慮し、特定の人の病状について、説明してはいません。すべて一般化した内容のものです。

 

できる事はした。過剰適応と無気力感

 

就職してすぐに無気力になる人は、めったにいません。職場のストレスを強く感じていても「溶け込もう」「頑張ろう」「貢献しよう」と努力し続けるものです。しかしストレスが限界点に達すると、緊張の糸が切れたように、やる気を失い無気力になり、すべてに嫌気をさして挫折感を味わいます。周りの人が、「しばらく休養すれば」と勧めても、切羽詰まった気持ちになり、辞表を書いて退職することも珍しくありません。ひと言で言うならば、過剰適応の反動、破綻から無気力状態になります。 


このような人は、

  • 全力投球で、取り組もうとする人
  • 勝気で、負けず嫌いの人
  • 律儀で自立心が強い人
  • 困難な仕事もノーといえず背負い込むタイプの人
  • 「周りと調和しなければいけない!」と他者配慮が強く、かつ自分を抑える人

以上のようなタイプの人が考えられます。

 

啓蒙活動が進み、上司のパワハラや、同僚間のいじめは、少なくなったものの、職場のストレスはやはり大きいです。競争も激しい上に、協調性が求められ、結果を出さなければいけません。無理な仕事を押し付けられ、残業し、休日出勤も続く。このようなストレスのために、過剰適応が裏目に出て、うつ状態になって無気力になるケースもよく見られます。

 

 

ストレスケアとカウンセリング

 

「元気がない、やる気が起こらない」など無気力を、主訴に来院された時は、まず無気力の背景に、うつ状態や、心身症 、不眠症、不安障害などのストレス疾患が隠れていないかどうか判断します。そのために無気力状態の期間、原因、受け止め方そして生活リズムについても質問します。次に、さらに、仕事の内容 人間関係などでストレスがなかったかどうかもチェックします。もし、ストレス疾患が原因の場合は、症状に応じた治療が必要になります。明らかな症状を持っていない場合は、ストレスケアを行います。ストレスケアは、カウンセリングの中で、自分自身を客観的に見つめていただき、ストレスに対して柔軟になってもらいます。そのために専門的なアドバイスだけではなく、人生の先輩として、素直な意見や助言も与えます。私は、カウンセリングは、雑談も含め、できるだけ日常的な会話に近い形をとります。クライエントも話しやすくなり、信頼関係が深まります。

 

軽症うつ病と無気力

 

うつ病では、意欲 気力が低下します。特に軽症うつ病では目立った症状が少なく、素人判断では心の疲れとしか映りません。「仕事に行きたい、でも気力が出ない。会社に行っても、仕事に集中できない、ちょっとしたことも決めれない、考えがまとまらない、考えが組み立てられない、普段の自分とは全く違う」と嘆かれます。さらに、眠りにくい、眠ってもすぐ目が覚めるといった不眠もきたし、食欲も出ず、ぼーっとして、体も疲れやすい状態が続きます。軽症うつ病は、抗うつ剤などを投与しつつ、心理療法(支持的カウンセリング)を行い、疲れた心を受け止め、支え、心の不安や緊張を弱めていただきます。しかし症状が改善しない時は2・3ヶ月休職して心身を休める必要があります。もし、無理を続けするとうつ病が慢性化し、なかなか改善しません。

 


心療内科医としてのアドバイス

 

・最初に強調したいのは、無気力状態をなった時は、心が疲れています。まずそのことを認めてください。「これからどうすべきか?」と気をもみ、心の平和が保てません。心の緊張ほぐし焦りをとって下さい。

 

・ストレスが続きどうしても、無気力が、改善されない時は、意見が分かれるかもしれませんが、中途半端に仕事に行くのではなく、思い切って1週間程休みをとって休養してください。職場や仕事のことが気になった時は、「今は休養中である。考えるのはやめよう」と自分自身に、いい聞かしてください。少し話が、逸れますが、森田療法と言う心理療法があります。治療の過程は大きく分けて4つに分かれます。最初は、何もしなくても良い時間を持つことです。絶対臥褥期言って、刺激を避けるため個室にこもり、トイレ 洗面 食事 以外は“何もしない”“何もしてはいけない”1日をただゆっくり過ごします。そうすることで、徐々に本来の活動意欲が、現れてきます。「何かしたい」「何かしなければと」心の底から思うようになります。と同時に、あるがままの自分を、受け入れるようになります。これが森田療法の考え方です。話を戻すと、休養中の最初は、焦りを感じます。「こんなことでいいのか」「怠けていられない、何かしないと」と。けれども、少なくとも3日間は、のんびり構えてください。そうすれば良い意味での開き直りができ、「あれもしたい、これもしたい」と本当の活力が湧いてきて、そのうちに「仕事に戻って、みんなの顔が見たい、自分の席につきたい」そのような欲求が自然に現れてきます。後の四日間は、体を少し動かし、したいことをしてください。けれども、家族は心配です。「休職して本当に良くなるのか?」と家族も不安になります。しかし、「元気を出せ」と追い詰めてはいけません。暖かく、見守ってください。

 


・気持ちに余裕ができた時は、友人に会って、「君ならどうする?」とアドバイスを求めましょう。疲れた時は、自分自身を客観視できません、それよりも友人の方が、自分についてはっきりと、見えることがあります。困ったら助け合うのが友情です。

 

・無気力状態が続くと、生活が逆転し、夜型になりやすいです。良くありません。心の回復力が弱まります。決まった時間に寝起きして、栄養のバランスを考えて食べる。また家にこもらず、できるだけ外出し、外の空気を吸う、このようにして、生活にリズムをつけてください。

 

・無気力になるのは、目標、生きがい、希望、を失った時です。そんな時は、仕事だけじゃなく、人間関係でも、敏感になって、心がすごく疲れています。けれども「新しい目標を見つけなければいけない」と、落ち着けません。しかし、すぐに見つかるとは限りません、と言うよりは、元気が出ず、空回りします。そんな時は、先走らないように、気を楽にする。そのために、楽しかったこと、がんばったことを思い出して、自分をいたわってください。

 

・心の疲れが少し取れれば、ストレスを整理し、過去を振り返り、将来の目標を考え、「本当にしたい事は、何なのか?」「できる事は、何なのか?」「すべき事は、何なのか?」「自分に欠けているものは、何なのか?」「自分が成長するには、どうすべきか?」自分なりに考え、前向きになって、方向性を打ち出しましょう。

 

・次に職場の人間関係について考えてみましょう。人と接する時・少し肩の力を抜く・相手の言動について考えすぎない・気を使いすぎない、つまり自然体を心がけて、あるがままの自分を表現すべきです。そうすれば周りの人も気を使わず、人の輪も広がり、職場に行くのが楽しくなります。

 

・職場以外の人間関係も大事にしましょう。例えばボランティア 、地域復興の会 NPO活動 郷里の会、 あるいは趣味の会等に、参加しましょう。そこで様々な人と出会い、交流を深める。「こんな生き方もあるんだ」「こんな考え方もあるんだ」など触発され、視野が広がり、仕事以外の生きがいを、発見します。それが、生活に 躍動感を感じさせ、無気力感から脱却できるようになります。

 

まとめとして

 

長い人生、「何もかもが嫌になる」「何もしたくない」といった無気力状態になるのは、よくあることです。私たちの社会は、物質的には豊かになった反面、とても複雑で、精神的なストレスが絶えません。心は疲れ挫折し、傷つきやすくなってます。努力するが、結果が出ない、空回りするようなスランプの後「自信が持てない」「自分の存在理由がわからない」「自分のしていることに、喜びが感じられない」と何となく虚しい感じになります。かといって何をしたいのかわからず、仕方なく生活を送る。このような気だるさは、口には出さないものの、多くの人が、経験すると思います。無気力状態が続くなら、大胆な意見ですが、見方を変え、それは自分を見つめ直す機会として、受け止めてみたらいかがでしょうか? 今までの自分を振り返って、「何がよくて」「何が良くなかった」など、見つめ直してください。そしてこれから「どうあるべきか?」」「どうすべきか?」など、自分なりに、答えを見つけ出すチャンスと考えてください。単調 空虚 退屈 な生活に終止符を打ち、1歩前に踏み出し、すべきことをしながら、したいこともする、マルティプルな生活に変えていきましょう。